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「山岳保険」約款の解読と要旨・・・というほどでもない

1.富士火災の約款概要
2.(有)セブンエーのQA
3.富士火災の約款抜粋
  ・救援者費用特約
  ・遭難捜索費用特約
4.三井住友海上のパンフレットから
5.富士火災のパンフレットから
1.富士火災の約款概要
 実際の保険約款がどうなっているか、2007年5月現在加入中の「ハイキング保険」の引受会社である富士火災の「傷害総合保険 ご契約のしおり」から、ポイントとなりそうなところを抜粋、要約してみました。こちら赤字はぼくのコメントです。実際の約款の写しはサムネイル画像をクリックすると表示します。

 これを読むといろいろな疑問が出てくるが、
「救援者費用」特約は登山以外の遭難でも使え、親族なども「救援者」に含まれるのでその交通費、宿泊費も対象となるが、移送費用(いわゆるヘリなどの費用)が支払い対象となるには現に治療状態にあることが必要。
「捜索費用」特約では移送時の状態の制限はないが、アイゼン等の登山用具を使わない(「山岳登はん」といえない)山行は対象にならない。あくまで捜索者からの請求による費用が対象であり親族などは「捜索者」には入らない。

という印象。ただしあくまでもぼくが加入している保険の約款であり、他社では異なる部分もあるだろうが、このような約款はたいてい業界で標準化しており1社のみが保険会社にとってリスクが高い約款は採用しないものだ。


2.(有)セブンエーのQA
 しかし、
(有)セブンエーの「山岳ガード、クライミングガード」のQA(こちらに記載)では以下のとおりとなっている。

Q;救援者費用保険金(ノーマル)と遭難捜索費用保険金(山岳遭難)の違いを教えて下さい。またどちらがよいの?
A;救援者費用保険は、山においてはハイキング程度の行動中におきた警察等に確認された遭難事故、叉は14日以上の入院となった事故が対象です。山岳登はんの定義(下記参照)に該当するものは不可です。(ここがポイントになります。)
対して遭難捜索費用は国内山岳地域において発生した遭難事故をカバーするもので、飛行機や船舶の遭難事故は対象とならないものの、山岳登はん中の事故も対象となります。山での遭難事故の捜索救助費用補償対策としてどちらが良いかと訊かれれば、オールラウンドに使える山岳遭難タイプをお薦めします。(ただし、両タイプとも病気や天災による遭難などは約款上支払ができません。

「山岳登はん」とはピッケル・アイゼン・ザイルなどを使用しての登山をいいます。ただしこの保険では、エベレスト・K2・マナスルなど危険度の高い山を除きます)

ということでいろいろあるようだ。ちなみにセブンエーのものは引受け会社は三井住友海上。

 では、三井住友海上なら大丈夫なのか?
 ということで手元にこの会社の保険証券があるか確認したところ、あったのは賠償責任保険(個人関係)だけでそこにはいわゆる山岳保険的な内容はなかったので、三井住友海上のサイトを見てみた。
  三井住友海上の国内旅行総合保険のパンフレットより


富士火災の救援者費用等担保特約条項(2003年10月改定 ご契約のしおりAより)


第1条(当社の支払責任)
@次の各号のいずれかに該当したことにより被保険者またはその親族が負担した費用に対して規定に従い費用を支払う。
(1)航空機、船舶が行方不明あるいは遭難したとき。
  飛行機事故や海難事故も対象になる
(2)急激な事故により生死不明あるいは捜索、救助活動が必要と警察等が認めたとき
  具体的にどんな場合かわかりにくいが電車事故とかビル火災とかだろうか?
(3)自宅以外の場所での傷害が原因で180日以内に死亡、継続して14日以上の入院した場合
  上記(1)(2)によるケガをさすと思われる。

第3条(費用の範囲
(1)捜索救助費用
遭難した被保険者を捜索、救助または移送(「捜索等」という)する費用のうち、これらの活動に従事した者からの請求に基づいて支払った費用

(2)交通費
被保険者の捜索等、看護、事故処理のため事故発生地または収容地(「現地」という)へ赴く被保険者の親族または代理人(「救援者」という)の現地までの電車、船舶、航空機等の1往復分の運賃で2名を限度。ただし上記1条の(2)で生死判明後または捜索終了後の移動は含まず。

(3)宿泊料
現地あるいは現地までの旅程でのホテル等の宿泊費で、救援者2名を限度、かつ1名あたり14日を限度。ただし上記1条の(2)で生死判明後または捜索終了後の移動は含まず。

(4)移送費用
死亡した被保険者の自宅までの輸送費用または治療を継続中の被保険者を自宅あるいは自宅のある国の病院、診療所に移転するための移転費(医師・看護師が付き添う必要がある場合はその費用を含む)
 これがいわゆる「ヘリコプターの費用」となる。従ってヘリに乗るときにはケガをするか内蔵等の治療中でないとヘリの費用は支払われない。現地では治療ができない高山病などはだめでしょう(酸素を吸わせても治療ではない?)

(5)雑諸費
救援者の渡航手続費(旅券印紙代、ビザ費用、予防接種料等)、救援者、非保険者が現地で支出した交通費、電話等通信費、遺体処理費。ただし国外の場合は20万円、国内は3万円が限度。
いろいろ範囲を広げた割には金額はせこい・・・

第4条(保険金を支払わない場合)
(1)保険契約者、被保険者の故意、自殺、犯罪、闘争行為・・・等、一般的なもの多数
(13)被保険者が次に掲げる運動等を行っている間に生じた事故
山岳登はん、リュージュ、ボブスレー、スカイダイビング、ハンググライダー搭乗、超軽量動力機搭乗、ジャイロプレーン搭乗その他これらに類する危険な運動
 ここでは「山岳登はん」の定義はしていませんが、別の箇所で定義済み、具体的には下の「遭難捜索費用担保特約」にある


富士火災の遭難捜索費用担保特約条項(2003年6月改定 ご契約のしおりBより)


第1条(当社の支払責任)
@被保険者が日本国内で山岳登はん(ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマー等の登山用具を使用するものをいいます)の行程中に遭難したことによって支出した費用を規定に従い支払う。
 額面どおり受け取ると上記のような登山用具を使わない(ハイキング保険の対象となるような一般道での)事故は対象にならない、ということか。

A前項の「費用」とは、遭難した被保険者を捜索、救出または移送(「捜索」という)する活動に従事した者(「捜索者」という)に対し、捜索に要した費用のうち、捜索者からの請求に基づき支払った費用でかつ当社が妥当と認めた費用をいう。
ここでは「救援者費用」特約にあるような移送の細かい定義はない、ということは「救援者費用」特約では認めていない(と思われる)高山病など治療状態にないままでのヘリコプターでの移送費用も対象になるのだろうか?

第2条(遭難の発生)
 被保険者の遭難が明らかでない場合、被保険者が下山予定期日後48時間を経過しても下山しなかったときは、被保険者または被保険者の親族が、以下のいずれかに対して捜索を依頼したことをもって遭難が発生したとみなす。
 (1)警察、消防団その他の公的機関
 (2)被保険者の属する山岳会またはその他の山岳会
 (3)有料遭難救助隊(ってあるんですか?)
下山予定時刻を過ぎただけでは「遭難」とはみなされず、ぼうっとしてまる2日待ちなさいというように見える。好天時はともかく荒天時でも???


 三井住友海上の国内旅行総合保険のパンフレット「国内旅行傷害保険」の記述からの抜粋。

保険金保険金をお支払いする場合保険金のお支払額
救援者費用
[特約]
国内旅行行程中に
・搭乗する航空機や船舶が行方不明または遭難した場合
・山岳登はん(ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマー等の登山用具を使用するものをいいます。)中に遭難した場合。ただし、所定の割増保険料をお支払いいただいた場合に限ります。
・事故によって被保険者の生死が確認できない場合または緊急な捜索・救助活動が必要なことが警察などにより確認された場合
・事故によるケガのため、事故の日からその日を含めて180日以内に死亡または続けて14日以上入院が必要と認めた場合
救援者費用等保険金額を限度として次の費用をお支払いします。
・遭難した被保険者の捜索、救助または移送する活動に要した費用(山岳登はん中の遭難に伴う費用については(注2)参照)
・被保険者の親族の現地および現地までの行程での宿泊料(救援者2名分まで、かつ1名につき14日分限度)
・死亡した被保険者の現地からの移送費
・諸雑費(3万円限度)
(注1)保険期間を通じ、救援者費用等保険金額がお支払いの限度になります。
(注2)山岳登はん中の遭難に伴う捜索費用、救助費用、移送費用については「遭難捜索費用担保特約」の手配が別途必要になります。

費用の範囲や日数、雑費の金額まで富士火災と同じである、やはり。しかしパンフレットだけから見ると、「遭難捜索費用担保特約」さえ付ければ救援者費用特約でのカーバー範囲+山岳登はん時のカバー範囲となるように見える。


5.富士火災のパンフレットから
 三井住友のパンフレットだけでは不公平なので
富士火災のサイトでパンフレットを見てみた。

ファミリースポーツ総合保険の案内より
担保条件保険金をお支払いする場合お支払いする保険金保険金をお支払いできない主な場合
救援者等費用スポーツ施設内でのスポーツ中、もしくは1泊以上の国内旅行中にケガのため、事故の日から180日以内に死亡または続けて14日以上入院した場合や、事故などによって緊急な捜索・救助活動が必要なことが警察などにより確認された場合。搭乗する航空機や船舶が行方不明または遭難した場合(旅行の場合)。 つぎの費用を救援費用保険金額を限度としてお支払いします。
1. 捜索救助費用(山岳遭難を除く。)。
2. 現地への交通費(救援者2名分まで)。
3. 現地での宿泊料(救援者2名分まで)。
4. 現地からの移送費。
5. 諸雑費(3万円限度)。
●故意、自殺、犯罪、闘争行為による場合。
●自動車または原動機付自転車の無資格、酒酔運転による場合。
●地震、噴火、津波による場合。
●山岳登はん・リュージュ・ボブスレー・グライダー操縦、スキューバダイビング・ハンググライダーなどの危険な運動を行っている間の事故。
「<注意>次のスポーツは対象になりません。
(4) 次に掲げる種目。山岳登はん、リュージュ、ボブスレー、グライダー操縦、ハンググライダー、スカイダイビング、レスリング、ボクシング、空手、拳法、ラグビー、アメリカンフットボール、ホッケー、アイスホッケー、バイアスロン、近代五種、ボート、ヨット、力ヌー、水上スキー、サーフィン、スキンダイビング、重量挙、射撃、ワンダーフォーゲル、モータースポーツなど。」

山岳保険あるはハイキング保険ではなく、一般的なスポーツや旅行での保険なので他とそのまま比較するわけにはいかないが、費用の範囲や条件などは参考になるだろう。ただ、<注意>にある除外種目が多すぎるのではないか、という印象はある。除外種目以外のスポーツってテニス、ゴルフ、サッカーなどの球技以外に何があるんだろう・・・。「ファミリースポーツではない」といわれればそれまでだが・・・。