江上 剛「統治崩壊」
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江上 剛「統治崩壊」を読んだ。
ここでいう「統治」とは「企業ガバナンス」のことである。 企業や役員個人が危機に際していかに当事者能力がなくなってしまうのか、ということである。
小説宝石の2003年1月から隔月連載されていたものを単行本にして今年の3月に刊行したようだ。 ちなみに単行本のページ数を412ページであるが、相応の厚みであり、「復讐総会」とは紙質も違うので嵩高紙は使っていないようだ・・・。
中身は氏の経験を活かした銀行ものである。 ストーリーもなかなかいい(最後の水戸黄門的展開は「復讐総会」と同じであるが・・・)。
サラリーマンとして気になるのは、モデルの存在である。 この小説に出てくる銀行のトップはホントにひどい。もちろん事件がないと小説にはならないわけで誇張や複数のモデルの組み合わせはあろう。 しかし、この小説を読んだ人は「こんなにひどいのか」という思いを持つだろう。 大企業や大銀行のトップなどまったく知らないぼくなどの一般読者にとっては、これが銀行のイメージになる。 特に江上氏の場合は経歴から、その銀行が特定される。 今回の登場人物も、「檜垣」は「檜」から「杉」で「杉田」、「若村」は「村」から「西村」なのか?とモデルの詮索をしてしまう。
江上氏はあとがきで自身が退職した理由を雑誌「選択」の記事とは別の形で書いているが、この小説にしてこのあとがきがあると、「こんな結末を迎えることができたら江上さんは銀行をやめなかったんだろうなあ」と思うと同時に、当時の銀行トップはこんなだったのか、と思ってしまう。
江上氏はそれを望んでいるんだろうか? |
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