80年代にスキーに夢中になった世代にとってこの映画はたまらなく面白い。
ぼくが最初にこの映画を見たのはTVだったから87年11月の公開より半年くらい後の事だ。ビデオに撮って何回も見ていた。
それから15年振りにDVDを購入して、昔のように繰り返し見ている。
「私をスキーに連れてって」については多数の人がその感想や研究をWEBで公開しているのでそれを見たり読んだりして、「そうなんだよなあ」と共感するのもまた楽しい。
というわけで、すでに語り尽くされた感のあるこの映画であるが・・・・。
【この映画を面白いと思える人の条件】
・80年代にスキーにはまっていた人。
・本当は車でスキーに行きたかったけど主に経済的な理由で夜行バスに乗り込み、関越道で板を積んだ車に抜かれた記憶がある人。
・目白通りから関越に上がる瞬間にいよいよだな、と思ったことがある人。
・プリンスホテルにあこがれたけど主に経済的理由でツアー提携の安い宿に泊まったことのある人。
・雪質が悪いと言われる上越よりも雪質が良い(といっても北海道にはかなわないのだが)志賀高原の方が偉いと思っていた人。
・ホイチョイプロダクションの「見栄講座」(こちら)のスキー編を熟知している人。
・別に楽しくもないのに女性がいると「むかで」をやろうといって複数で重なり合うようにボーゲンしていた人
・食事の時に板を外に並べて置く時に盗難防止のために友人と板を交換して雪面にさしていた人
・板を担ぐときはトップを先にしてビンディングを肩にしていた人、けっしてトップを上にしてテールを手で押さえない人
・「特定小電力トランシーバー」では電波が飛ばないといってスキー仲間で「アマチュア無線免許4級」を取得して1回だけコールサインをもらったことがある人
・さらに5年後の局免許更改は忘れてコールサインは失効したのに今でもコールサインだけは覚えている人・・・7M2BNAとか
(ちょっとくどいけど7M2BNAのようにコールサインの先頭が数字ではなくてJで始まる人を尊敬していた人)
・スキー場で天候が悪くなるとユーミンの「BRIZZAD」が頭に流れる人
・LANGEの靴を履いているスキーヤーを上級者と尊敬していた人
・LANGEの靴を履いていないのは足型が合わないせいだと言い張っていた人
・けれどもLANGEを履いている人のように滑る直前までバックルをゆるめておき、滑り出す直前にバックルを締めていた人
・SALOMONのステップインタイプの靴を履いていたスキーヤーをミーハーだと思っていた人
・肩でターンを始める初心者に優越感を感じたことのある人
・リフトの支柱附近に盛り上がった雪の固まりを小ジャンプをしてリフトに乗っている女性に受けていると思いこんでいた人。
・ペアリフトに並ぶ時に込み具合よりも前方に並んでいる異性で判断していた友人T
・初心者の女性に意識的にぶつかりそうにしてそれをきっかけに仲良くなってしまいそのままその女性とそのまま結婚してしまった友人K
・ステアリングが革なら問題ないのに安いグレードの車なのでプラスチックのステアリングなんで滑り止めに革のドライビンググローブをしていた人。
・モデルチェンジしたら妙にグリーンハウスが大きいデザインだなあ、と少しがっかりしていたセリカがWRCで活躍してびっくりした人
たぶん、こんな経験がある人はこの映画が面白い。
逆にリアルタイムでないとこの感覚はわかりにくいのも事実。
【時代を感じること】
15年前の映画なので時代を感じることも多い。
それも楽しみの一つ・・・。
・オープニングは矢野(三上博史)のオフィスの風景がBGMなしで始まるが、雑音として聞こえるのはリボンで印字するラインプリンター(それもたぶんパソコンでなくてワープロ専用機だろう)のヘッドの音。
・くわえタバコで仕事をする矢野。最近のオフィスではなかなか見ることができない。
・優(原田知世)は何回も矢野にすっぽかされ、矢野の職場に公衆電話から電話をしたり、寒空のもとで待ち続けるが、携帯電話の普及した昨今では考えられないことだ。
・携帯電話は原田知世の実姉である原田貴和子が実家でかけるシーンが出てくるが、昔の戦争映画(TV)コンバットでビッグジョンがチェックメイトキング2と交信していたトランシーバーのようだ。(手術室で布施博が助手の女性に持たせていたのは携帯電話ではなくてたぶん子機だと思うが・・・)
・志賀万座2時間半、けっこう楽しめそうじゃない、といいながらも転倒してしまったWRC仕様セリカが履いていたタイヤはスパイクタイヤ。
・竹中直人がいかにも初期にやっていた意地悪なチョイ役をやっている!
・なんといっても海和俊宏が健在だった! サロットカップのエグゼビションでデモしていた海和の小柄な姿とサロペットとサロパン姿にはちょっとジーンと来た。
ところで最近海和さんどうしているのかと思ったらお元気なようですね。
こちら
あら、同じページに馬場監督もいる・・・。
・さらに、ではあるが・・・、自殺した沖田裕之が元気に「とりあえず」と写真を撮っていたことか。
【なんでだろう?】
映画だから、「お話」だから、あれ?なんで?という点はけっこうある・・・。以下、自問自答・・・。
・検算もしないで書類を提出した矢野は急いで帰宅すると車のタイヤをノーマルからスタッドレスに履き替えるが自宅にあれほどのガレージがあるなんて矢野さんはお金持ちなのか?
→倒産した大商社を思い出す「安宅物産」のエリートサラリーマンだからきっとお金持ち。明治屋で買い出しするんだから住所は港区でしょう。でなければいかにも単価が高そうな明治屋で買はない
・華麗にゲレンデを舞う矢野を優が指で狙ったとたんに矢野はこけてしまうが、その後、起きあがったときになぜ優と視線があったんだろう??
→ まさに射るような視線だったんでしょう。
・矢野と優をくっつけようとした原田貴和子は優が会社から出るところに車を滑らせて同乗を誘うが、貴和子はずっと待っていたんだろうか?
→ 待っていたんです。呉服屋の娘ですから暇なんです。
・万座で年末を迎える矢野はナイターの誘いも断っていたが「飲め飲め」と言われた後に車で志賀に向う。飲酒運転じゃないのか?
→ そのとおりです。まあ、あまり飲んでいないし外は寒かったからすぐ醒めたでしょうが。
・矢野が万座から志賀に車で飛ばすのはまあ時間的もわかるけど、新年まであと10分というところで鳥越マリから車のキーを借りた優は何のために飛び出したのだろう?まさかこれから5時間かけて明け方までに万座に行くつもりだったのか??
→ そのつもりでした。優は会社のロッジだから矢野が志賀まで来てもどの宿にいるかわかっているけど、優ちゃんは矢野が万座のどこかのロッジにいるしかわかっていないのに行こうとしたんですね。ロッジがわからなくてもゲレンデに行けばきっと分かると思ったのでしょう。で、矢野にあったら「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」っていおうと思っていた。
だから新年の花火の直後にあのせりふが出たのです。
・万座までウェアをすぐに持って来いと電話で言われた優は即座に「5時間はかかる」と回答しているけど、車で5時間かかるってなぜ知っていたのだろう??
→矢野が年末に万座から志賀へ車で行った時の「5時間かけて振られに行くんじゃ馬鹿だよな」という話をデートの時にでも聞いていたに違いない。ただし、志賀万座ツアーコースの話もしたかもしれないが、そこが冬は滑走禁止であることまでは矢野は優に話をしていなかった。
・横手山の電波塔の横から遠くをにらんで矢野は滑り始めるがはたしてにらんでいた彼方に万座はあったんだろうか?それともまったく別のロケ地だったんだろうか(いちおう山岳展望マニアの疑問)
→ 地図とカシミールで見ると万座方向には四阿山が見えるのでたぶん本当にあっちにあったと思います。すべり出した斜面のむこうに四阿山が見えるとするとツアーコースと方角はあっていそうだ。
・ツアーコースでビバークする予定が単独で滑り出した矢野がころんで照明を壊して途方に暮れているとすぐに優たちが追いかけてくる。ビバーク地点ではテントも張ってあったし、初心者の優もいるのになぜあれほどすぐに矢野に追いつけたのだろうか?
→ 矢野が転んでから優たちが追いつくまでには実際には相応の時間がかかっていて映画では単純にカットしただけ、とでも考えないと・・・。
・やっとのことでイベント会場に到着したのに会場はもぬけの殻、呆然とする矢野たちを尻目に沖田裕之は屋外でやっている撮影会に気が付くがなんで分かったんだろう
→ 映画の音響が悪かっただけで実は屋外から拍手とかざわめきが聞こえていた。
・原田貴和子と高橋ひとみのWRCセリカは途中からスキーゲレンデを走りだしたが、いったいどんなコースを走ったのだろうか??
→ これはちょっとわからない。今度地図を眺めて考えてみようっと。
「私のスキーに連れてって」についてのサイトは検索すると多数出てくるが、けっこう詳しいのはこちらかなあ。