石 割 山(1,413m)  94.3.27(日)

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 明日は天気がよさそうだと土曜日の天気予報に誘惑され、近場で富士山と南アルプス が見えるところで、楽なところ、に候補を絞る。実は、先週の高川山の写真が露出オー バーで富士山がとんでしまい、雪辱を果たしたいというのもある。(何せ20年近い逸品 を使用しているので)
 いずれにせよ、杓子山と迷ったが、雪も心配なので標高の低い石割山にした。昨年夏 のホテルマウント富士からの南アの眺めを考えれば、すばらしい眺めを満喫できること 必定。先週の高川山では南アが少ししか見えなかったのでその不満を晴らすつもり。
 山中湖まで行くとなると車に限る。早朝に家を出てサンエブリでおにぎり4つを買っ て中央道に乗る。じきに朝焼けに光る富士山が見え出だしは好調。東富士道路ではミラ ーに白根三山が映り気もはやる。平野から道志への道を僅かに行くと石割神社の下社と 思われる鳥居があり左折、舗装が終わるところに車を止める。
 林道はいきなり凍結している。地面が薄く白い化粧をしているのは霜のようだ。やが て神社の立派な鳥居がある。きれいなトイレもあり車も置ける。ただし途中の林道がが たがたで4WDでないと上がれない。鳥居をくぐり狛犬に見送られ、石段を登る。平成 4年8月の日付のある石段で寄進者の名前が彫ってある。昔、クラブの合宿で泊まった 、湖秀荘のものもあった。この石段が今回のなかでは一番苦しかった。3段階に傾斜を 上げ、登り終わるころには汗が吹き出すよりも足がボロボロ。振り返れば富士山が美し い。
 石段を終えて山道に入るが、日陰にはかなり雪が残り場所によっては難渋する。日が 当たっているところは霜も融けているが、木立の影に沿って霜が残っているのが、当た り前とはいえ面白く思える。名前も分からない小鳥がさえずり日だまりハイクの様相を 呈してきた。石割神社の祠も真新しい。賽銭をあげ本日の無事を祈願。ご神体の石が大 きく迫力がある。
 クマザサの生い茂る狭い道を歩く。途中何度もすべりそうになり木の根につかまり、 クマザサにつかまるうちに、ふと、山は登るものではなくて、山に登らせてもらうのだ と思った。手助けになる木の根もクマザサもすべて山そのもの、われわれは山に登ると か、山を征服するとか言ってはいけない、山には登らせてもらうのだ、と強く感じた。
石割神社の功徳かもしれない。雑木林の間からはあくまでも秀麗な富士が見守る。
 空が明るくなったと感じるとすぐに山頂だ。時計の高度計は1,395m(その後1,410mま でを前後する)。誰もいない山頂では大きな富士山と南アルプスの全山(甲斐駒から聖 まで)が出迎えてくれた。思わず喜びの言葉が口をつき、顔がほころぶ。
 おそらく先週の低気圧通過時に積もったであろう処女雪にはじめて足跡を残す。誰も いない山頂は気分がいい。でも、写真を撮ってもらえないので、セルフタイマーで撮る 。
 山頂からの眺望は予想どおりの大展望。東と北の方は林に遮られるが、西の眺めが雄 大。御坂山塊は黒岳まででそれより右(東)は杓子、鹿留山に遮られる。林の間には大 菩薩の黒岳と雁が腹摺山が見える。何はともあれ本日の主役は富士山、大きすぎて裾野 がカメラに収まらない。
 おにぎり3つを平らげ(1つは予備食として下山時まで確保)、30分ほど大休止をし て平尾山を目指す。ここからは正面に富士、右奥に南アルプスそして背後には大菩薩を 眺めながらの稜線漫歩。途中、雲取から石尾根の鷹の巣山まで見えた。雲取直下の稜線 はまだまだ真っ白で2,000 m峰であることを誇示していた。
 平尾山では本日唯一の登山者に会う。東海自然歩道をずっと歩いているという、中年 の男性であった。双眼鏡で石割山山頂を覗くと登山者が何人かいた。ここからは丹沢方 面がよく見える。雪におおわれた高い山はおそらく蛭ガ岳であろう。そうそう、御坂山 塊の間に白い峰が2つあった。双眼鏡で見ると左の山はかなりの傾斜で、20万図で同定 すると間違いなく八ヶ岳だ。御坂山塊より低いこの山で八ヶ岳が見えるとは儲け物。
 平野への道は緩く、東海自然歩道の一部で手入れも十分、歩きやすい。道標も本に記 載されたような朽ち果てる寸前どころか真新しい。石割山への上りのロープも適所にあ り、地元の努力と山の持つ魔可不思議な力を感じる一日であった。      (終)