以下はFYAMAPのCD-ROM刊行にあたり「FYAMAPと私」 というテーマで執筆したものを一部修正して掲載します。

■□ 展望ソフトが教えてくれた実践パソコン教室 □■

多摩の岳夫

1.「多摩の住人」誕生

 ビジネスIDでニフティを初めて利用したのは92年だったと思う。ワープロによる通信だった。会社は一応CUG(クローズド・ユーザ・グループ)を設定していまして、ニフティの一般のサービスに入りにくい雰囲気があったけど、「勤務時間外は関係ない」という全く根拠のない理由で、残業時間帯になるとニフティのさまざまなサービスを見ていたが、フォーラムというのは何だかよくわからなくて見たことがなかった。

 そのうち、フォーラムというのは無料で入れるという重要な事実がわかってさっそく旧FYAMAを探して入会した。入会のオペレーションをしてみると、ハンドルネームをいれろという。なんじゃこれ。とりあえず多摩に住んでるから「多摩の住人」とでもしておこう、ということで3秒でハンドルが決定した。

 旧展望の広場は田代博氏が議長を努めており、すでに 「展望の山旅」の読者であった私は「おお、こんな有名な方が」と感心したもんです。(昔から本を書く人と 金持ちは偉いと信じている)
 はじめての発言は「自宅近くから見える南アルプスはどこ?」というものでした。

(註)「多摩の住人」とは私が久しく使用していたパソコン通信上のハンドル名です。

2.98マルチ

 フォーラムを覗くために残業をするのは理不尽ではないか、ということで、自宅のワープロにソフトとモデム(当然、2400ですね)を装着して現在のIDを取得したのは94年になってからのこと。それまではあまりFYAMAも展望の広場も見ておりませんでした。

 で、自宅で自由にアクセスできるようになり、展望の広場をROMると「やまおたく」という隠語が飛び交っていた。
どうも、パソコン用のソフトらしい、そういえば田代先生の本にもパソコンで書いたおかしな絵(^^ゞがあったなあ。なになにWINDOWS版もあるらしい、でもWINDOWSってなんだ。98用もあるようだ。98っていうのはたしかNECのパソコンだよな。ソフトが多いっていう。じゃあ、それ買って、うわさの「やまおたく」を動かしてみようっと。

 ということで、短期集中・自習パソコン講座の始まり。MS-DOSの本とパソコンの本を10冊ばかり2週間で読み「WINDOWSとCD-ROMとやまおたく」が動くマシンということで98マルチを購入した。(SX33MHz,MEM:5.6MB,HDD:170MBで30万もした。時代を感じますね、ってわずか1年半ですが)

 こうして「犠牲者」がまたひとり誕生した。

3.やまおたく

 パソコンを買ってからの最初の発言は「ソフトの会議室」で「やまおたくをやるにはどれをダウンロードすればいいのか」というもの(^^ゞ。このときはYさんに詳細に教えていただいた。

 DOS版は一発で動いた。おお、山がむこうから飛んでくる。やまの名前が付いてる。すげ〜。近くの山を描画させると大きな三角でいまいちだけど、遠くの稜線を描くとまるで景色そのままだ。

 秀丸を入手してWINDOWSが使えるようになると(余談だけど、秀丸ないとWINDOWSってものすごく不便ですよねえ、メモ帳じゃあほとんどのドキュメントよめないし)さっそくWINDOWS版もダウン。おお、ずりずりできる。マウスだ、ダブルクリックだああ。そうです。私は「やまおたくfor WINDOWS」でWINDOWSの操作を覚えたのです。ありがたやあVERDEさまあ。

 このころ、マニュアルの深読みによりDOSとWINのSMARTDRVの二重起動をやりましてHDDを見事クラッシュさせ、パソコン稼動1ヶ月で早くもHDDの再フォーマット、DOS/WINの再インストールという厳しい修行をした(^^ゞ。

 やまおたくにはかなりのめり込みましたね。とにかくデータが豊富にあった。Sさんほかのデータをダウンロードして集合ファイルを作ったり、自宅近辺やお気に入りの地域のデータを作ってまた集合ファイルに入れて・・。特に山頂をクリックするとその山のデータがでたり、そこへジャンプ出来たりして機能の豊富さには目を見張りました。
 ただ、データの組込み方法や緯度経度データと座標データの違いなどに相当悩みまして、会議室ではVERDEさん、Sさんに随分お世話になりました。
 やまおたくでWINDOWSにも慣れ、通信もWINDOWSに移行した。秀Termは6MBいるっていうからメモリも4MBだけ増設して9.6MBになった。これで「推奨8MB」っていうのを見ても恐くない。

4.CHsystem

 ライブラリを覗くとなんだか、大きなファイルがある。ソフトの広場ではDAN杉本さんという人がKさんにマンツーマンで指導をしている。きっとDANさんていう人が中年の方で指導を受けているKさんが若い人なんだろうなあ。(本当にそう思ってました)
 でも、なんか鳥瞰図が書けるみたいだ。コプロがないと厳しいらしいが、おもしろそうだな。でも2400のモデムじゃあ2時間はかかるなあ。まあ、いっか。ダウンしちゃええ。

 ダウンして・・・。まず、ドキュメントを見る。なんだこのドキュメントは。ものすごい量じゃあないか。しかも整然としている。でも、全然わかんない。何、98でしか動かないのね。ラッキー。DOSでやるのか。なに、マウスがいる?DOSでしょ。まあいい、起動してみよう。
 おお!WINDOWSだ。マウスとかマルチウィンドウってDOSにはない、と思っていただけにこのショックは大きかったですね。描画が出来るまでは思いっきり時間がかかったけど、出来た絵はもの凄いきれいだし。でも、難しいなあ。それにうっかり起動させると1時間はパソコンが使えなくなる。コプロっていうのがあるといいらしいけど、98マルチにはつくのがないらしい。あっても結構高いものみたいだし・・・。暫くはこの環境で我慢しよう、といいながらドキュメントを読解できず、CHとはその後格闘の日々が続くのです。

5.都庁オフ

 そんなこんなでやまおたくとCHsystemにうつつを抜かしていて展望の広場はいつもRTN(発言タイトルのみ取得するNifty-Serveのコマンド)で流していた。だから中身はほとんど見たことがなかった。おかげで山村正光さんを迎えての地図研山梨大会なんていうのも知らなかった(非常に残念)。もっとも地図研っていうのはきっと専門家が集まる学術的なものだろうと浅はかにも思っていたので気にもしていなかったが。
 ところがRTNでタイトルだけ眺めていても「八珍」というのをよく見る。これはなんだ。(私は大胆にも「八珍」とは8人のやまオタクの集まりのことか、と質問している)

 このときもただの「八珍」であれば見逃したであろう。このときは「VERDEさん上京記念」のサブタイトルが付いていたのだ。やまおたくファンとしては是非ともVERDEさまのご尊顔を拝さねば・・・。それに座右の書である「展望の山旅」の作者である山尾さんも来られる。でも、いきなり「展望の山旅」を持っていってサインをねだるのはやめておこう。会員削除されるかもしれない(^^ゞ。
 でも、都庁って混むぜ。どうせ時間どおりにはいけないし。第一、誰ひとり顔を知らないでどうやってわかるかなあ。まあ、いいや、わからなかったら都庁の夜景でも見てビール飲んで帰ろう。

 仕事の都合で1時間ほども遅刻し都庁展望台に上がる。かなりの人だ。さあてどの集団かな、と悩む間もなく分かってしまった。パソコン開いてビール飲んでる集団がいる。何枚も横につないだ写真を見せている人もいる。話してみればみんなふつうの人達。
 憧れの?VERDEさんにもお会いできてその声にしびれる(本当にいい声なんだから)。初対面なのになぜか話題がはずむのが不思議だった。
 94年8月も終わろうとしていた。そしてここでは10月に誕生するFYAMAPの構想が練られていたのだった。後に、展望の広場の世話人になる布石は、あの都庁オフにあったかもしれない(^^ゞ。なんてね。

6.CG回覧

 新幹線からの風景をシミュレートした動画を初めて見たのはFYAMAP結成記念オフだったか。DAN杉本さんあやつるDX4の98ノートで見た。おお、新幹線がすごいスピードで走っている。富士山が動いている、トンネルになると真っ暗じゃないか、南アルプスがアップでせまる。もう、ただただ絶句。
 同じ日にはHさんがついにWINDOWS版に移植したバミューダのβ版を披露してくれた。データの精度に応じて画像もリアルになる。なんで世の中こんな楽しいソフトを作ってくれる人がいるんだ。嬉しいなあ。

 フォーラムでは新幹線の車窓展望ムービーをはじめ通信ではちょっと、という巨大なファイルをFDにしてみんなで回覧しようということになった。当然、参加。
 時期ちょうど、外付けHDDを増設したばかり。FDは25枚もあり、解凍するとテンポラリを含めると100MBにもなり(最終40MB)、増設HDDがさっそく役に立った。

7.MoV

 新幹線の車窓ムービーの画像を作るソフトがライブラリにアップされた。MoV という。なんて読むんだ、とりあえず、モブとでも読んでおこう。でも、数値地図 っていうデータが必要で、これが1枚9,700円とえらい高い。とにかく「東京」と「甲府」の2枚だけ買って動かしてみる。数値地図の買い方もフォーラムで教えてもらった。

 動かない!
 やまおたくは一発で動いたのに・・・。ソフトの広場で作者のKragenさんに照会すると、どうやらDOSのコンベンショナルメモリが足りないらしい。(注:最近のMoVはメモリ不足でも親切にも描画サイズを変更して動作してくれます)
 久しぶりにDOSの勉強をさせていただきました。HSB(98用のマルチコンフィグ高速リスタートソフト)を導入し、さらにメモリ管理ソフトでUMBを連続で作成して、余計なドライバをはずしてやっと580KB空きました。
 今度こそ起動。う〜うう、遅い。描画する距離にもよるけれどデフォルトの150キロ設定で描かせると大体、1時間半はかかる。でも、出来上がった画像の素晴らしさは抜群だ。なんとか使えるようになりたいものだ。

 やっぱりコプロというのが絶対いるなあ。でも98マルチにはコプロ用の口がないっていうし、だめかなあ。と、思っていると98マルチ用にある会社がコプロを出すという。近所のPCショップで予約を入れたのは当然である。
 こうしてようやくコプロ付きDX2 66MHzの現在の環境になった。今では完全なローエンドですね。 でも、画期的でした。なにせ、今まで1時間以上かかったMoVの描画が2分で終 わる。20倍以上の速度が出るのです。CHsystemも同じです。これでますます展望ソフトにはまることになる。
 特に操作がカンタンできれいな絵が描画できるMoVにはとっても愛着が湧きまして、WINDOWS版作成についてはずいぶんとKragenさんにプレッシャーをかけてしまった(^^ゞ。
 また、MoVの画像(BMP)をどのようにして容量を押さえて保存するかということを通じて画像変換/表示ツールについてもいろいろ教えていただきました。

8.カシミール

 MoVと同じころ、カシミールが出た。可視マップを描画し、さらに鳥瞰図も描ける総合展望ソフトだ。鳥瞰図には山の名前まで表示される。CHsystemのDAN杉本さんの作品だ。CHsystemのような化け物ソフト(^^ゞを作った人だ、驚きはしないぞ。でもやっぱりこれも化け物ソフトだ。断面図が描けたり、一発判定なんていうのもついている。
「どこからどの山が見えるか」という我々のもっとも基本的かつ永遠のテーマを瞬間的に判定してしまうという血も涙もないソフト!の登場だ。特に「一発判定」の結果は「ご託宣」とも呼ばれ、「カシミール様のご託宣によれば見えません」と言われるとあとは数値地図の誤差にかけるしかないというもの。
 MoVとは全く範疇が違うソフトだけれど作者どうしの情報交換でお互いにどんどんレベルアップしている。オンラインソフトのよいところをあますところなく発揮している。最近はこの作者2人とやまおたくのVERDEさんも巻き込んで密かにプロジェクトが進行しつつあるようだ。
 山(最近は車窓の展望が多いが(^^ゞ)から帰るとまずカシミールで山座同定してそれからMoVで展望をシミュレーションしてみる。これが最近の私のパターンですね。

9.最後に

 というわけで、私のパソコン履歴はまさにFYAMAPの展望ソフトとともに歩んできました。いや、FYAMAPの皆さんに手取り足とり教えて頂いたというべきでしょう。今回のCD-ROMがきっかけで動画の世界にも片足を突っ込みまして、ますます深みにはまる勢いです。

パソコンを全く知らなかった私が1年と少しで、会社では、いっぱしのパソコン通のフリをしていられるのも、すべてFYAMAPの素晴らしいソフト達のおかげです。好きこそものの上手なれ・・。
 作者のみなさんにあらためて御礼を申し上げます。

 パソコンにはまって山に行く回数は、というとむしろ増えました。もともとこの数年はめっきり回数が少なかったのですが、なんとかライブラリにアップできるような写真をとりたい一心で頑張っています。ライブラリにアップしたいがためにどうでもいい写真をフォトCDにしています。フォトCDってなんといっても画面が大きいし、明るさも調整できるんで結構まともな写真に見えます。そうは行っても50ミリ1本じゃあ、どうにもならないのも事実。そろそろカメラにも投資をしたい。
 一方で、MACのソフトもよさそうなのが多くて・・。
 そんなこんなでFYAMAPはすっかり生活の一部です。
 とりとめのない駄文にお付き合いいただきありがとうございました。

 追伸 このホームページを公開することになったのも、FYAMAPでホームページを構築することになりその作業のなかでノウハウを蓄積できたからです。

                             1995/8/28記
                             1995/11/29訂正

10.まだあるぞ!  

 というのが2年前。

 その後のFYAMAPの私への悪影響は・・・。


|ホームへ |用語集へ|