▼2004年 6月16日 (水)   -- No.[1]

江上 剛「復讐総会」
復讐総会
江上 剛「復讐総会」を読んだ。

なかなか小気味良い連作である。
元総会屋の勇次が正義のために活躍する「ヒーロー物」である。
そういう意味では出来すぎの話が多いが、初期の頃に見られた文章の不自然さはなく、気楽に読める。もちろん、ネタは氏の経歴に負うところが多い。特に2002年のシステム統合の失敗の後の激務で、心筋梗塞で死んでしまう、某銀行のシステム企画担当次長のくだりには、他人事とは思えない気がする・・・。システム開発の現場はどこの世界でもデスマーチが付き物ではあるものの、経営層に振り回された挙句のシステム統合の失敗とその後処理のご苦労は、サンデープログラマのぼくには想像もできないものだ。
 さて、この小説。最初は連作物とは知らずに読み始めたので、表題作がいきなり劇的な結末を迎えてしまい、「あれえ、もう終わっちゃうのかよ。このあとはどうすんだよ」という印象であった。あれだけ勇次のバックグラウンドを設定したのに、もう終わりかよ、という不満がちょっと残った。ま、読んでいた環境が歯医者の待合室だったこともイライラ感をちょっと募らせたか。
 で、次の作品に入るとこれも主人公は同じ勇次なので、ほっとした。

読みやすい話が多いし、「非情銀行」とかの初期の作品に比べればやたら銀行や金融にかかわる小難しい話が展開されずに読後感はいい。ただ、いずれの作品もよく言えば「水戸黄門」的であり、そんなに上手くいくわけないよな、という感じはする。氏の今後の課題であろうか。